平成18年に教育基本法が改正されました。第1条(目的)は、人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期すという基本的な姿勢を踏襲しています。一方、第2条以降は大幅な変更が加えられました。昭和22年の制定から半世紀以上が経過する中で、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化など、教育をめぐる状況が大きく変化し、様々な課題が生じていることがその要因と考えられます。 その中で特に注目したいのが第2条(目標)です。これからの苦難の時代を切り開くためとして5項目に渡って教育の具体的な目標が以下のように記されています。 1 幅広い知識と教養 ※ 真理を求める態度 豊かな情操と道徳心 ※ 健やかな身体 ※ 2 個人の価値を尊重 能力,創造性,自主 自律の精神 勤労を重んずる態度 3 正義と責任 男女の平等 自他の敬愛と協力 公共の精神 主体的に社会の形成に参画・発展に寄与 4 生命を尊び 自然を大切に 環境の保全に寄与 5 伝統と文化を尊重 我が国と郷土を愛する 他国を尊重 国際社会の平和 旧基本法の第2条では「実際生活に即す、自発的精神、自他の敬愛と協力、文化の創造と発展」でしたので、ここまで具体的に明示されたのは異例と言えましょう。さらに、平成29年から平成31にかけて学習指導要領も大きな改訂が行われましたが、その前文に教育基本法の第1条(目的)と第2条(目標)がそっくりそのまま記載されています。なぜ、わざわざ貴重な紙面を割いて全文を載せたのか。その意図を考えずにはいられません。 今の日本の教育は、人格の完成を目指し…という教育の目的に本気で取り組んでいると胸を張って言えるでしょうか。中でも、教育の中心たる学校教育において、第2条の目標のどのくらいをカバーできているでしょうか。特に※印以外についてどう取り組めばいいのか…そのことを学校教育は真剣に考えているでしょうか。改正教育基本法や改訂学習指導要領はそのことを厳しく指摘しているように思えてなりません。教育の目的や目標という原点に立ち戻ったとき、 教育の本来の在り方が見えてきます。現状とのギャップを目の当たりにして、私にはやるべきことがまだまだあるように思えます。 今日は青森公立大学の「総合的な学習の時間の指導法」の授業の最終日でした。私の心の叫びが15人の若者に届いたと信じたいものです。 [2023.11.24 坂本 徹] コメントの受け付けは終了しました。
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